DJI Osmo Pocket 3の到着が待ちどおしい

 撮影用ドローンや撮影用ジンバルの世界トップメーカーと目されるDJIが、10月25日夜10時にジンバル一体小型カメラ「DJI Osmo Pocket 3」の発売を発表した。わたしは初代のDJI Osmo Pocketも二代目のDJI Pocket 2も持っていて、とくにPocket 2がとても気に入って使い続けている。そしてより画質の良い「三代目」が出れば、重すぎて扱いにくいレンズ交換式カメラやジンバルの使用はもうやめたいと思って、新型が出て来るのをずっと待ち望んでいた。

すでにYouTubeにたくさん上がっているレビュー動画を観ると、とにかく画質が良いという感想が多い。画質は何によって決まるのか、画質が良くなっている理由は何なのか、DJIサイトのスペック比較から(全く専門家ではない)わたしなりに考えてみた。

イメージセンサー(撮像素子)サイズは「二代目」の「1/1.7inch」から「1inch」になった。これはセンサーの対角線距離を示している。これによって計算上の受光面面積は『2.89倍(約3倍)』になった。一方で、画素数は「64百万ピクセル」から「9.6百万ピクセル」に約3/20(15%)に減少した。受光面面積が3倍になり画素数が15%に減ったので、計算上の「1画素の面積」は「0.84平方ミクロン」から「16.13平方ミクロン」に『19.18倍(約20倍)』になった。これが画質が良くなった最大の理由だと思われる。

画質は、高精細さすなわち画素数が多いことと、色の高階調すなわち表現できる色の種類が多いことによって改善される。もちろんその上で映したい被写体にきっちりピントが合う高精度オートフォーカス(AF)が必須である。

DJI Osmo Pocket 3は、4K動画を撮るのに必要最小限の画素数(9.6百万ピクセル)まで画素数を減らした。動画を再生する4Kテレビの画素数はアスペクト比(横:タテ比)16:9で「3840×2160=8.3百万ピクセル」である。したがってアスペクト比4:3のイメージセンサー(撮像素子)は「3840×2500=9.6百万ピクセル」をフルに使えれば必要十分である。カメラは基本的に写真(静止画)を撮る道具と考えられてきたので、「より高精細化=より多い画素数」を求めてきた。高精細であれば写真の一部を拡大してもくっきりと写っている。それがカメラの性能基準だった。3年前に発売されたDJI Pocket 2は、そういう「写真用カメラ思想」に沿って作られた「1/1.7inch」64百万ピクセルの「高精細」イメージセンサー(撮像素子)を搭載している。しかし、動画は最大4K(8.3百万ピクセル)でしか出力しない。おそらく4Kにダウングレードして記録しているのであろうが、動画撮影機としてはアンマッチなスペックである。3年前はまだそんなセンサーしか調達出来なかったのであろう。

3年経って発売されたDJI Osmo Pocket 3は、1画素毎に「10ビット(2の10乗=1,024)」の3原色(RGB)で1,024の3乗=1,073,741,824色(約11億色)の階調によって映像を記録することができる。これは数字上レンズ交換式の高価な高級カメラと同等のスペックである。他方DJI Pocket 2は、「8ビット(2の8乗=256)」の3原色(RGB)で256の3乗=16,777,216色(約17百万色)の階調によって映像を記録することしかできない。この色階調(グラデーション)の違いは実際の映像でどのように違って来るのか。またそれを生かしたどのような映像撮影が考えられるのか、まだよく分らないがこれだけでも動画撮影の楽しみが拡がる。

DJI Osmo Pocket 3は、DJI Pocket 2より1画素面積が約20倍も大きくなった。つまり1画素が取り入れられる光の情報量が約20倍になった。それによって10ビットの色階調(グラデーション)を表現できるようになり、そして暗所(低照度)でもかなり良い画質の映像を撮れるようになり、そして被写界深度が浅くなって少しボケやすくなった。しかしボケるということはピント合わせ(AF)の正確性と迅速性がより重要になるということである。

DJI Osmo Pocket 3は、(スペック表には載っていないが)「全画面位相差センサー」と、それが計測する被写体までの距離に連動して動くオートフォーカス(AF)レンズを持っていると推定される。レンズはフルサイズ35mm換算20mm相当の広角レンズで、絞り開放F2.0(不変)、最短撮影距離は0.2mである。受光面面積はフルサイズの5分の1程度しかないので実焦点距離は4mm程度と推定され、そのレンズを2mm程度内で動かしてフォーカスを合わせると推定される。レビュー動画の中にレンズが微かに付きだしたり引っ込んだりするところを捉えた映像があった。

絞り機能はなくF2.0不変なので露出調整はシャッター速度だけになる。明るくてシャッター速度が速くなりすぎると、照明やイルミネーションの「フリッカー(ちらつき点滅)」が生じたり、速く動く被写体の動きが不自然に見えるようになる。しかしシャッター速度を遅くすると明るい部分の「白飛び」が生じやすくなる。この対策として、サングラスのような機能をはたすNDフィルターは不可欠と考えられる。別売の磁石式NDフィルターはND16・ND64・ND256の3枚セットである。レビュー動画によれば最も明るい陽光の下ではND256装着が最良ではないかとしていた。

DJI Osmo Pocket 3は、「Low Right(低照度)」動画撮影モードを新たに設定しているが、機能的な説明はほとんどない。レビュー動画によれば、通常の動画撮影モードと低照度動画撮影モードの映像の違いはほとんど見分けられない。通常の動画撮影モードでかなりの暗所まで撮影できるので、どういうケースで低照度動画撮影モードを使うのだろう。わたしの推定では、ISO(光感度)が爆上がりするような状況で「高感度ノイズ除去」が働くのではないかと思う。したがって使うべきシーンはかなり限られるだろう。

要約すると、画質が良く、暗所に強く、被写界深度が浅いので「背景ボケ」や「玉ボケ」もある程度撮影可能と思われる。たとえば花の背景ボケ映像は長い棒の先にカメラをつけて最短撮影距離の0.2m近くまで「寄って撮影する」ことで実現できるのではないか。また街の灯りなどの玉ボケからピントを合わせるには、シングルフォーカス(AFS:焦点距離固定)で最短撮影距離付近に合わせたところから手動で無限遠(∞)に焦点距離を切り替えることで実現できるのではないか。そんなシーンのテスト撮影を早くやってみたい。

明日か明後日には石狩にカメラの現物が届く見込みである。

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