Insta360 Ace Pro アクションカメラの新たなフラッグシップ機

 
カメラの「画質」は、「解像度(画素数の多さ)」と「感度(1画素の大きさ)」によって決まります(と思っていました)。1画素の大きさは「画素ピッチ」と呼ばれ、μm(マイクロメートル)で示されます。イメージセンサーの画素ピッチは4μm(16平方μm)以上あることが望ましいとされてきました。同サイズのイメージセンサーで、高解像化する(画素数を増やす)と画素ピッチは小さくなり、解像度を下げる(画素数を減らす)と画素ピッチは大きくなるというトレードオフ関係にあります。

たとえば、SONY α7シリーズは35mmフルサイズセンサーですが、有効画素数 6100万・3300万・2420万・1210万という著しく異なる4種類のセンサーがあります。35mmフルサイズVLOGCAM ZV-E1は1210万画素センサーです。カメラの用途によって解像度と感度のバランスのいろいろな組合せから選べるようにしているのです。フルサイズの画素ピッチは、6000万画素だと3.8μm、1200万画素だと8.49μmで、6100万画素は4μmを下回っているので高解像度に振りすぎた特殊なカメラになります。

2023年10月25日に発売された DJI Osmo Pocket 3 を買いました。公開スペックは、「1インチ」CMOSセンサーで、「最大静止画サイズ」は16:9で3840×2160/1:1で3072×3072としていますから、有効画素数はヨコ3840×タテ3072=11,796,480と推定されます。1型センサーの画素ピッチは、1000万画素で3.14μm、1200万画素で3.11μmとされています。DJI Osmo Pocket 3 のアメリカ人の評価YouTube動画に画素ピッチにふれているものがあり、小型カメラとしてはきわめて大きい3.2μmもあると強調していました。4μmには及びませんが小型センサーカメラとしては著しく高感度のカメラであるといえます。

わたしが所有するレンズ交換式カメラ LUMIX GH5M2 はマイクロフォーサーズ(4/3インチ)イメージセンサーで2030万画素です。マイクロフォーサーズの画素ピッチは2000万画素で3.35μmですから、DJI Osmo Pocket 3 と「感度」はほぼ似たレベルで、高感度カメラ水準の4μmには及びません。マイクロフォーサーズカメラが暗所性能を問題にされがちなのはこのためです。1400万画素で約4.01μmですから画素数をそれより減らすべきだということになりますがなぜそうしないのでしょうか。高感度を求めるならフルサイズカメラを買ってくれということでしょうか。

スマートフォンやアクションカメラは「電子的手ブレ補正」で映像を切り取る(クロップする)ので、4K(3840x2160=8,294,400ピクセル)映像を出力するには最低1200万画素程度は必要です。iPhone 15 Pro Max のメインカメラはセンサーサイズが不明ですが著しく高精細な4800万画素になっています。仮に1型センサーだとしても、画素ピッチは4200万画素で1.66μm、5000万画素で1.52μmですから著しく高精細で低感度です。しかしこの高精細で低感度の映像を高速・高性能な画像処理エンジン(A17 Pro チップ)によって強力に「補正」します。カメラが撮りきれなかった色味や明暗の階調を補正して良い映像にすることができます。また被写体の背景をぼかして高性能カメラのような映像を作ることもできます。あとから作ったものであることはぱっと見ではほぼ判別できません。こうなってくるとカメラの画素ピッチの大きさすなわちセンサーサイズはあまり意味がないということになってきます。

DJI Osmo Pocket 3 はそんな中で画素ピッチを可能な限り大きくするというカメラの王道の方向に進んだカメラです。ところがそのあと Insta360 Ace Pro という新しいアクションカメラが発売されました。1/1.3インチセンサーで iPhone 15 Pro Max メインカメラと同じ4800万画素あるので画素ピッチは著しく小さいです。カナダ人YouTuberが紹介ビデオで(下にリンクがあります)何回か言っているようにiPhoneと同等の「5ナノ」半導体チップを搭載していて、その高速・高性能の処理力で映像を強力に「補正」することができるようです。その最大の特徴はスモールセンサーで小画素ピッチにもかかわらず「暗所性能」が抜群に良いことです。これは従来のカメラの概念を覆しています。また8K(7680x4320)24fps動画を撮影することができます。8K動画がどれだけ実用に使えるかは別として、搭載しているチップがいかに高速・高性能なものであるかを誇示しているのではないかと思います。

たとえば、GoProが熱停止してしまうのは防水・防塵で密閉された筐体の中でチップが熱を出すからです。半導体の微細化が進むと高速・高性能になるだけでなく消費電力が減るので発熱が減ります。そこがGoPro 12とInsta360 Ace Proの今のところの大きな違いではないかと思います。

Insta360 Ace ProとiPhone 15 Pro Max のメインカメラのハードウエア・スペックは似ているところが多いです。しかし、Ace ProにはLeicaの光学レンズやフリップモニターがあり、映像データ処理技術も部分的に上回っているところがあるようにみえます。

発売から数日間そんなことをいろいろ考えてきた末、現時点でアクションカメラのフラッグシップモデルといえるInsta360 Ace Proを注文してしまいました。Amazonで買えますがInsta360ストアで注文したのでTシャツ付きで中国から日数をかけて送られてくると思います。だいたいどんなものか分かっているので届くのに時間がかかってもかまいません。

参考:デジカメレポート
画素ピッチの計算方法とセンサー別の数値の意味

カナダ人のInsta360 Ace Pro紹介動画
Insta360 Ace Pro Review - The Action Camera We Have Been Waiting For?

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