Insta360 『リフレーム』できるカメラ

 

要約:Insta360創業者『劉靖康(リウ・ジンカン)』は、インタビューに答えて「初心者でもプロのような映像が撮れるカメラを作りたい」と起業動機を語っていた。しかしプロのような映像に近づくにはたくさんの技術的要素がある。Insta360はカメラの「向き=構図」を撮影後に決めることができ、これを『リフレーム』(構図し直し)と呼んでいる。『リフレーム』によってたしかに「プロのような美しいカメラワーク」の映像をつくることができる。

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動画撮影の要素:大別すると、カメラとレンズの様々な撮影条件設定、カメラの位置と向き、に二分できる。前者はカメラ性能の進歩によってかなりの程度カメラ任せにできるようになった。オートフォーカスが進歩してボケ映像はむしろプロが意図的に扱うものになった。カメラとレンズの性能にかかわらない撮影要素は、撮影ポイント(カメラの位置)と構図(カメラの向き)とカメラワークである。プロと初心者の差はもっぱらここに出てくる。Insta360は『リフレーム』ができるので、撮影時は撮影ポイント(カメラの位置)だけに集中することができる。

『スティッチング』:Insta360 ONE X2本体の両面に魚眼レンズカメラがある。この2つの魚眼レンズカメラが撮った2つの半天球映像から360°全天球映像をつくる。その繋ぎ合わせを『スティッチング』と呼ぶ。カメラはスティッチングは行わず2つの半天球映像と6軸慣性センサー(3軸ジャイロセンサー+3軸加速度センサー)データの3つのファイルを出力する。専用スマホアプリか専用パソコンソフトでこの3つのファイルを読み込むと自動的にスティッチングが行われる。

ブレ補正と水平修正:動画撮影でカメラの位置や向きが動くと映像がブレたり傾いたりする。アクションカメラやスマホは6軸慣性センサーを搭載し、そのデータを使ってブレた映像の補正と水平修正を行う。ズレの大きい外縁部分がクロップ(縮小)されるので映像が2~3割小さくなる。Insta360 ONE X2も6軸慣性センサーを搭載するが、カメラは補正を行わずセンサーのデータファイルを出力する。専用スマホアプリか専用パソコンソフトでファイルを読み込むと自動的にブレ補正と水平修正が行われる。特徴として、二次元映像ではなく360°全天球映像の位置ずれ修正なので、映像がクロップされることはなく修正精度も高い。

『見えないポール』:2つの魚眼レンズの間にはカメラ本体がありスティッチ(繋ぎ合わせ目)に少し隙間が生じる(はずである)。自動で『スティッチング』する際にカメラ本体とポールが映像に映り込まないようになっている。ポールが消えるのであたかも別の撮影者がいるかドローンで撮っているかのような映像に見える。ただスティッチ(繋ぎ合わせ目)に歪みやずれが生じるので、まあまあ上手く補正される場合もあるが補正がうまくいかず繋ぎ合わせ目が目立ってしまう場合もある。

『キーフレーム』:この場合の「フレーム」は「構図=枠」ではなく動画の中の「1コマの静止画」を指す。動画は1秒間に24~60のコマ(フレーム)を連続して映し出すことによって動く映像になる。動画になんらかの変更を加える場合は変更を開始するコマ(フレーム)を決める。これを『キーフレーム』と呼び、キーフレームを決めることを「キーフレームを打つ」という。

『リフレーム』によるカメラワーク:キーフレームAを打って構図を決め、次にキーフレームBを打って別の構図を決めると、カメラの向きがAからBに等速で移っていく。こうしてC・D・E...とキーフレームを打ちながらカメラワークを作っていく作業が『リフレーム』である。等速で構図が移行していく映像は動画撮影を始めたときからずっと憧れてきたカメラワークである。Insta360ではそれがきわめて容易に実現できるのである。

『Insta360 Studio 2021』:Insta360専用パソコンソフトである。カメラの3つのファイルを読み込むと自動的に『スティッチング』と「ブレ補正と水平修正」を行う。『リフレーム』作業が終わればその結果を二次元動画ファイルに書き出すことができる。しかしいわゆる「動画編集ソフト」ではないので、書き出した動画は別の動画編集アプリで編集する。スマホ用アプリは簡易な動画編集まで行えるが、ファイル圧縮で映像品質が低下する。そもそも360°映像の一部を切り取る『リフレーム』が映像品質を低下させるので、YouTubeで使うような映像はスマホアプリは使わないほうがよい。

「構図」のパラメーター:『キーフレーム』には、3軸(パン軸・チルト軸・ロール軸)の角度、FOV制御(画角)の角度、Distortion Control(魚眼レンズ歪み補正)の5つのパラメータがある。画面をマウスで動かすとパラメーターも動くが直接数値を入力することもできる。安定した滑らかなカメラワークにしたい場合、ロール角度は0.0°(水平)、FOV制御(画角)90°以下、Distortion Control(魚眼レンズ歪み補正)0.00(歪みなし)に固定する。したがって変更するのはパン角度(水平方向)とチルト角度(上下方向)の2つだけになる。FOV制御(画角)は、狭くするとズームインして歪みが少なくなるが画質が低下し、逆に広くするとズームアウトして歪みが大きくなり100°を超える辺りで映像は円形に変わる。普通の二次元映像としては75°~90°の範囲がよいようである。また元が魚眼レンズ映像なのでDistortion Control(魚眼レンズ歪み補正)は0.00(歪みなし)まで落とさずに0.50~0.70くらいの歪みを残した方が映像の質が良いようである。

『プロジェクト管理』:360°全天球映像からベストの構図とカメラワークを決めていくのに試行錯誤が必要になる。『リフレーム』作業は『プロジェクト管理』で「プロジェクト1」として保存できる。「プロジェクトの追加」を行うと「プロジェクト2」としてリフレーム作業前の元の360°全天球映像に戻り『リフレーム』のし直しができ保存できる。必要に応じプロジェクト2・プロジェクト3・プロジェクト4...と試行を重ねて行くことができる。また複数のプロジェクトを二次元動画に書き出すこともできる。これによって『リフレーム』作業は著しく効率化ができる。

カメラの位置(撮影ポイント):撮影にあたって考えなければならない唯一のことはカメラの位置である。できるだけ周囲360°を撮っておきたい場合はカメラの近くに障害物がないようにする必要がある。カメラ単体を手持ちすると撮影者自身が大きな障害物になってしまうので、ポールを使用してカメラを遠ざける。ポールの長さは自撮りにちょうどよい画角となる長さ以上に伸縮できるものが良いが、長すぎると取り回しが難しくなる。カメラの向き(構図)を後から設定できるので陽射しの角度を気にする必要がないのはきわめて大きな強みである。ただ、高いところから撮れば太陽を背にできる可能性がより大きく、低いところから撮れば太陽を見上げる可能性がより大きくなる。

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以上が、Insta360 ONE X2を手にしてから3日ほど経ったところでの自分の理解を整理するために書いてみたメモである。

Insta360の最も良いところは撮影した後に『リフレーム』でカメラワークを決定できるのでカメラの向きを気にせずに撮影ができることである。そして『リフレーム』すると、水平が維持されブレることがなく等速で滑らかに構図が移行していく「プロのような美しいカメラワーク」になる。これが最も素晴らしいところである。

Insta360の弱点は『リフレーム』して書き出し最終使用する動画の解像度が低くなることである。Insta360 ONE X2は2つの2.7K魚眼カメラで5.4K360°全天球映像を作るが、切り出される映像の解像度はかなり低くなる。YouTubeを観てもアクションカメラとして以外に使っているひとが少ないのはやはり解像度の低さがネックなのであろう。
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生存期間 71年と156日 誕生日9月21日
石狩に住み始めて 4年と233日 2017年7月6日から
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