欧州の最貧国ウクライナ

 

YouTubeは視聴者が関心のありそうな動画をおススメしてくる。おススメされた動画を観ると更に似たカテゴリーの動画をおススメしてくる。結果的に自分の意図以上にある傾向に引っ張られていくことになる。わたしの場合、そのひとつの傾向として外国人女性が日本語で発信しているチャンネルが多い。そしてそのほとんどが日本に住むロシア人とウクライナ人の女性のチャンネルである。あらためて思うとそんな嗜好が自分にあるとは思えないのだが...

その中に「限界集落の貧乏農家にウクライナ人が嫁いで来た」というめずらしく日本人男性がやっているチャンネルがある。タイトルで誘っているが、ウクライナ人の奥さんはほとんど動画に出てこない。あまり出てこないのはとてもシャイだからと説明している。まだ日本語はあまりできないし、新潟の雪深い山村で早朝の除雪の仕事を毎日いっしょにやっている。彼女が今の生活を楽しみ幸せそうという感じはほとんど伝わってこない。男性が彼女を励ますために頑張っているという内容である。最近「ウクライナ情勢」がニュースのトップにあがり続けているので、このチャンネルのことを思い出した。

ニュースはアメリカとロシアの問題など政治的軍事的な側面しか報道しない。ウクライナで暮らしている人々のことには誰も関心がない。あらためて日本外務省のウクライナ基礎データをみて興味深いことが2つあった。

まず「一人当たりGDP(2020年;世銀)」が3,726ドルということである。これがどういう水準かというと、アメリカは63,358ドルで17倍、日本は40,089ドルで11倍弱、中国は10,511ドルで3倍弱である。ウクライナの隣国、ロシアは10,115ドルで3倍弱、ポーランドは15,699ドルで4.2倍、ベラルーシは6,398ドルで1.7倍、モルドバは4,523ドルで1.2倍である。つまりウクライナは欧州の最貧国なのである。

ウクライナのGDP(ドルベース)が低迷を続けているのは、ウクライナの通貨フリブニャ(UAH)の対ドル為替レートが2008年のリーマンショック不況で大暴落し、その後も回復せずむしろ通貨安傾向が続いているからである。

そこで次にウクライナの貿易を見てみる。輸出は492億ドルでGDP1,555億ドルの31.6%も占め輸出依存型経済である。しかし貿易赤字が▲51億ドルでGDPを▲3.3%も押し下げている。通貨が弱いのはこの慢性的な貿易赤字のためである。

ウクライナの主要な輸出品は穀物(19.1%)鉄鋼(15.6%)鉱石(9.0%)である。ひまわり油は世界一、とうもろこしと大麦は世界第3位、小麦は世界第6位のシェアを誇る農業国であるが、穀物の国際市況は供給過剰で低迷しウクライナの生産は伸びていない。

鉄鉱石産地・炭田・鉄鋼業集積地はウクライナ南東部のドニエプル川以東およびドニエプル川河口周辺のロシア国境近くに集中している。したがってもしこの地域が分断されるとウクライナの経済は更に困窮することになる。

ロシアとNATOの軍事的にらみ合いのはざまに位置するウクライナは、政情が不安定で、それが欧州からの投資を呼び込みにくくしている。経済の低迷と政情不安定を嫌気した人口流出により人口は減少傾向にある。ウクライナを西欧に引き寄せたければ民間投資に政府保証をつけるなどして投資促進を図るなど方法はいくらもある。しかし軍事的な支援でNATOに取り込みロシアに対抗すること以外に関心はないようにみえる。ウクライナに住む人々は欧州に見捨てられた人々のように思える。

さて、最初のYouTubeの話に戻って、外国人女性が日本語で発信しているチャンネルの特徴は日本は素晴らしい国ですねと褒めちぎることである。ウクライナやロシアの田舎は貧しいので日本を褒めるテーマが尽きない。しかし日本の限界集落に嫁いできたウクライナ女性をみるとなんだか悲しい気持ちになってしまう。


コメント