先日町内会の当番の方がおばあちゃんに紅白饅頭と商品券を届けに来た。毎年町内会がコミュニティセンターで敬老お祝い食事会を開くが、去年に続いて今年も開催できなかったのでその替わりに届けてくれたのである。
紅白饅頭は直径10cm近くもありおばあちゃんが紅の半分を食べてギブアップしたのでわたしが残りの1個半を3日かけて食べた。
おばあちゃんが、責任取ってくれたので1,500円の商品券で好きなもの買っていいよという。美智子に近所のスーパーで絶対買わない1,500円のものはなんだと訊いたらシャインマスカットかなという。おばあちゃんもブドウが好きだからじゃあそれにしようと言うと行動派の美智子がすぐに買ってきた。それが写真のシャインマスカットでこのひと房で消費税込2,138円である。
日本の果物の価格は異常に高い。しかし北海道の田舎の小さなスーパーでもひと房2千円もするシャインマスカットが売られているのはそれなりに需要があるからであろう。ネットで話題になっているからかもしれない。
そこで今日の日記はこのシャインマスカットの話にする。
日本のマスカットはマスカット・オブ・アレキサンドリアという品種である。紀元前のローマ帝国時代にエジプト・アレキサンドリアから地中海諸国に拡がったとされるきわめて古い品種で甘みが強く香りが特徴である。日本ではブドウの女王と呼ばれる。
しかし、マスカットは地中海性気候に適応しているので、雨が多い日本は栽培に適さずほぼ岡山県だけでしか生産されていない。また種無しにするジベレリン処理が効かないので必ず種がある。
シャインマスカットは、マスカットの良いところを残しながら弱点をなくすための品種改良交配がいろいろ試み続けられた結果、ようやく広島県で出来上がった新品種である。日本国内品種登録は2006年でまだ歴史は浅い。気候や病気に対する耐性が強く、ジベレリン処理で種無しにすることができ、収穫後3ヶ月程度は保存がきくという理想のマスカットである。
シャインマスカットは外国での品種登録を怠ったため外国でも合法的に生産できる。中国韓国のシャインマスカット生産をどろぼうと批判する人もいるが、そもそもマスカットは地中海産品種で日本固有のものではない。
ブドウ王国山梨県では、マスカットは路地で栽培できず高級ブドウはブドウの王様巨峰であった。しかし、2020年に山梨県のシャインマスカット出荷量が巨峰出荷量を上回り、さらに増えていく見込みである。女王が王様にとってかわりつつあるのである。
また北海道でもフルーツ街道の仁木町や余市町でシャインマスカットの生産が行われている。ブドウ狩りもできるらしいが、売られている高価なシャインマスカットのようなものをたくさん食べられるわけではない。
では、シャインマスカットの生産量がそんなに増えているのにどうしてこんなに高いのか。一言でいえばものすごく手間をかけて作られているからである。逆に言えば高くても売れるから手間をかけることができるのである。
どんな手間をかけるかは以下の動画でざっくりイメージは分かる。これは素人のお手伝い動画である。本職の動画もいろいろあったが工程ごとに詳しい別動画になっていてざっくり全体を知ることができるものがみつからなかった。
さてそれで、食べてみたらすごく甘いが価格に見合う価値があったかというとそうは思えなかった。これを繰り返し買うかといわれるとそれはないと思う。話題になっているからスーパーでも売られているのだろうが大量に並ぶようなことはないであろう。今はシャインマスカットバブルといってもいいかもしれない。
うちでふだん食べているブドウはスーパーでたくさん売っているチリやアルゼンチン産の皮ごと食べられる種無しぶどうである。まだ買ったことはないがコストコではシードレスグレープが通年販売されている。価格はおおむね100g100円以下でスーパーのものよりずっと安い。ただロットが1.8kgなので老人3人で食べきるのは大変そうである。1.8kgあってもこのシャインマスカットひと房よりずっと安い。
結論から言うと、シャインマスカットは美味しいが、スーパーやコストコで買えるシードレスグレープも十分に美味しい。価格差は10倍も違うが味覚の差は倍も違うとは思われない。生産者の苦労は分かるが全国でどんどん作ってもこの価格で売れ続けるとは思われない。
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